株式会社アンサーノックス

2012.10.05
旧ブログ

日本人の中身

yasさんからの投稿です。

先日旧知のカナダ人と話をしていて、彼の両親が実はチェコからの移民であることがわかりました。
私事ですが私にはチェコ人の友達がいて、またチェコ語に堪能な大学時代の友人もいます。
チェコにも一度行ったことがあり、チェコ人と一緒に一週間、寮で共同生活をしたこともあります。
かすかに憶えていた片言のチェコ語をしゃべってみたのですが、
遠い異国の言葉に再び意外な形で触れ、なんとも不思議な感慨を覚えたものです。
図らずも学習環境が整ったことでもう一度チェコ語を、とも思いますが、
チェコ語を含むスラブ系言語には一般に馴染みがないこともあり、
日本人が習得するには非常な困難を伴います。
名詞が格変化し動詞の変化も7格あると聞けばその難しさを想像していただけるでしょうか?

当たり前のことですが移民の国であるカナダには様々な出自を持った人々が暮らしています。
移民一世である彼の両親は大変な苦労をして移民先の社会に馴染み、
第二の故郷に自分たちの居場所を作りました。
ですが家庭内ではチェコ人としての生活スタイルを守り続け、
移民二世である彼にも言語を仲立ちとして
、完全な形ではないにしてもチェコ人の生活文化が受け継がれています。
これは同じく移民の国であるブラジルで日系人の家庭でも行われていたことでしょう。
遠く祖国を離れ異国に暮らすうち、望郷の念はいよいよ抑えがたく、
ナショナリズムというわけでもないですが、
極端に純化した形で「日本的な日系人」に会うのは珍しいことではありません。
たまたまサンパウロに来ていた歌手の新谷のり子が淡屋のり子ではないと伝えた時の、
移民一世のおじさんのがっかりした様子は忘れられません。
「淡屋先生はもうこんなところまでお出でにはなれないんです」

「今から百年経ったら日本人の中身も相当変わっているだろう」というのは
チェコ系カナダ人の彼の弁であります。ブラジルやペルーから、
ポルトガルやスペインを始めとしてそれこそ世界中の遺伝子が流れ込み、
そのほかに中国や韓国からの流入も相変わらず続いています。
百年待たずとも遺伝子レベルで日本人の中身は変わっていくでしょう。
元々の日本人の成り立ちそのものが重層的だということはさておき。
20年前にはほとんど見ることのなかった外国人同士が
日本語で話す光景を見る機会も多くなりました。
日本人と同様に日本語の中身も変質し、
クレオール(固定化された簡易言語)化した日本語も発生するかもしれません。
あるいはもう発生しているのかも。少なくともその萌芽はあるように思います。

せっかく移民一世が苦労して築いてきた地位を捨て、
親の故国で「逆移民」として苦労する。
なんともやり切れないことのように思えますが必ずしもそうとばかりもいえません。
様々な要素を新たに受け入れることで、明らかに衰退しつつある国家としての日本、
あるいは生物としても衰退していく日本人、
そのどちらをも再生できる契機になりうる可能性があります。
外国人の一人一人が日本社会に適応しようと努力する。
その必死の努力が日本を変える力になる、かもしれません。